食洗機って必要?

ウラ夫

2013年02月17日 18:04

食器は食洗機で洗っていますか?
それとも手洗い?

キッチンづくりのお打ち合わせの中で、よく話題になるのが食洗機について。

これまで食洗機を使っって来なかった方からは、

「これまでも使わないでやって来れたんだから、要らない。」
「でも、あったら便利なんだろうな…」
「思ったほどキレイにならないって聞いたんだけど…」

そして、使って来られた方からは、

「すごく便利。もう手放せない!」
「セットが面倒で、結局使わなくなっちゃった」
「とってもキレイになる!」
「思ったほどキレイにならない」

など、賛否両論。
ネットを検索しても、同じようなやりとりがほとんど。

迷うのも無理ないですよねぇ。

実際、食洗機が必要か、そうでないかは、どちらが正しいということはありません。
家族の一日のライフサイクルや、何に時間とお金、そしてスペースを使うか、
といった暮らしの価値観によって様々ですよね。

食洗機を使うことのメリットやデメリットなどについては、
ネットでもたくさん書かれていますから、
同じようなことを書くのはやめておきます。
(お知りになりたい方は、気軽にお尋ねくださいね。)

ここではちょっと視点を変えて、
どうして上に書いたような全く正反対の意見が聴こえてくるのかを、
食洗機そのもののかたちを見ながら、書いていきたいと思います。
いろいろな誤解が解けるとよいのですが…。


食洗機ですが、大まかに3つの種類に分けられます。
ちなみにこの分け方はσ(^^)の独断ですが、
道具として大きな違いがあることは間違いありません。

・据え置き型
・国産メーカーのビルトイン型
・海外メーカーのビルトイン型

あれ?それだけ~?って思ってないですか。
まあ聞いてくださいな。

この3種類のそれぞれのかたちの違いが、
食洗機に対する大きな期待を満たしたり、裏切ったりしてるんです。
道具ですから、「かたち」がそれを使おうとする人のニーズに合っているかが、
とっても大切なんです。

では何が違うか。それは、大きさと扉の開き方です。

「据え置き型」とは、いわゆる家電屋さんで見かける、ワークトップの上、
シンク脇などに後付けするタイプですね。

このタイプの特徴は、
・ビルトインタイプに比べて価格が安い
・本体をワークトップ上に置くのでジャマ
・食器が収めづらく、容量が圧倒的に少ない

えー、別に悪意があるわけではないんですよ。
後付けするものなので、水栓から分岐したホースが伸びたりするのも、
若干仕方ないんです。
扉は正面から開けて、中に食器を並べていくようになります。

このタイプを「普段からよく使ってます。便利!」という方は、
食器をきちんとセットしていくことが比較的得意な方と思われます。

しかしながら、正直言いますと、σ(^^)に届く、皆さんの生の声としては、
「食器がうまく納めるのが面倒で、使わなくなっちゃったよ~」
という方が多いような気がします。

ここではあえてこれ以上は触れないことにします。
って、悪意はないです。悪意は。


次にビルトインタイプ。
国産メーカーと海外メーカー、という乱暴な分け方をしたのは、
そこに最も大きな違いがあるからなんです。

それは扉の開き方、そして食器の収め方。

現在国産メーカーのほとんどは、本体を手前に引出して、
上から食器を収めるかたちをしています。「プルオープン」と呼ぶそうです。



それに対して、海外メーカーの食洗機は例外なく、
正面の扉が手前に向かって全開するようになっています。
そして、中から食器を載せるバスケットが引出しのように出てくるようになっています。
こちらは「フロントオープン」と呼んでいます。


この形状の違いでなんとなくお分かりかと思いますが、全体の容量が大きく違います。
キッチンに収まった時の見た目はどちらも45センチ、あるいは60センチなんですが、
内部は国産の機種に比べて、海外のものはかなり大きい。
(給排水の設備を食洗機下に設けているか、食洗機横に設けているかの違いも大きいです)


そして、この扉の開き方によって、食器の収めやすさにも大きな差があります。

国産・プルオープンのものは上から収めていく形状のため、
底の方から順々に食器を重ねていく、という感じになります。
つまり、下から上手に収めていかないと、あとで上のものが収まらなくて、やり直し、なんてことも。

これも、得意な方には何てことないかもしれませんが、苦手な方が多いのも確か。
メーカーの説明書では、食器の収め方を写真入りで図解したりしています。

海外・フロントオープンのタイプは、バスケットが引き出し状になっています。
たいていの機種は一番上にカトラリー用、その下に2段と、合計3段であることが多いですね。
中段のバスケットの高さを変えられるようになっているので、
大きなフライパンやレンジフードのフィルターなどの大物を洗うことも出来ます。


また、洗浄用の水を噴出すノズルも、国産プルオープンでは一番底にひとつあるだけなため、
特に上側に収めた食器に水の当たりが悪い=洗い残しが生じることがあるように思えます。

海外フロントオープンでは、底面のノズルの他に、上段と中段バスケットとの間にもうひとつ、
上下に水を噴射するノズルがあります。
構造上、洗い上がりに差が出るのも当然といった感じがします。


最初にいくつかあげた、食洗機への正反対の感想。
主に食器の収めやすさと、洗い上がりについてです。
これは、以上の3種のうち、どのタイプを使われているのかによって、大きく違うでしょうね。

ただし、価格も大きく違います。
実売価格でも、国産ビルトインの最新モデル(45センチ幅)が10万台前半なのに対し、
人気のあるドイツメーカーのものは20万~30万前後でしょうか。


価格はともかく、疑問に思うのは、これだけ使い勝手に差があるのにもかかわらず、
国産メーカーはなぜ、プルオープンにこだわるのか?なんです。
思いつくところで、パナソニック、リンナイ、ハーマン、三菱など、現行機種はほぼこのタイプです。
というか、日本製の食洗機以外でこの形状を見たことはありません。
お得意のガラパゴス現象なんでしょうか。

実は、日本でもかつては海外メーカー同様のフロントオープン式がありました。
国産食洗機の黎明期ですね。
そして、今でもリンナイやハーマンでは細々とフロントオープン式の機種が販売されています。
昨年キッチンを作らせていただいたお家では、その食洗機が選ばれました。

 
これはハーマン製のもの

バスケットを引き出すとこんな感じ。
ちょっと見にくいですが、洗浄用のノズル(プロペラの羽根のようなもの)が底側と、
上段のバスケットの下にもうひとつついているのがわかるでしょうか?

本体サイズの関係でバスケットは2段のみ、と容量は及びませんが、
食器の収めやすさは格段です。

しかし、これらの機種は古い機種ということもあって、改良もモデルチェンジもなく、
メーカーのウェブサイトでも、なんとなく仲間はずれ的な扱い…。
かなりお安いんですけどね…。


なんだか、国内メーカーのものづくりは、食洗機を普及させたくないと思ってるんじゃないか
とさえ感じてしまいます。

食洗機を使うメリットはいろいろとあります。
しかし、それは食洗機が手軽で使いやすく、
そして出来るだけ働いてもらってこそ感じられるもの。
食器を収めるのや洗い上がりににストレスを感じるようでは、
無用なデカい箱でしかありません。決して安いものではないんですから!

国内メーカーには、変な独自性にこだわらず、
本当に使いやすい食洗機を作っていただきたいものです。


さてさて、実は冒頭の2行は、友人の整理収納アドバイザー、
宮嶋万輝代さんのブログのタイトルを、そのまんまお借りしたものです。

ご自宅の食洗機撤去!の話題がとても面白かったので、ぜひご覧下さい。

キッチンに食洗機って本当に便利? ~シンプルお片づけブログ


宮嶋さんのお使いだった食洗機は「据え置き型」のものですね。
でも、食洗機としてはとても働いてくれていたようですね。

ただ、彼女は食洗機周りのお掃除などを考えた上で、手洗いの方を選んだようです。
もちろんこの選択もありでしょう。

そういう私も、実は毎日手洗い。
まあ、いろいろと事情はあるんですけど、手洗いをやり終えた時の達成感を
自分へのねぎらいとして、何とかやっています。
まあ、カッコつけて言えば、
キッチンデザイナーとして家事の根源に触れることを大切にしているんです!
なーんてね。


宮嶋さんのブログの中で気になった言葉。

「でも、多くの便利な物を持ちすぎていることで逆に不便になったり面倒な作業が増えたりってこと、ありますよね。
それは、掃除機だったりパソコンだったりソファだったり収納棚だったり、いろいろですが。」


σ(^^)も、かつて、デザイナーとしてパソコンやCGを使いこなせることが必要なんだ、
と思っていた時期がありました。
そのためにずいぶんな時間と労力を費やしました。特にCGってσ(^^)には難しくって…。

が、ある日、プレゼン用のCGが間に合わなくて、仕方なく手描きでスケッチを描いたら、
お客さまがすごく感動して下さった、なんて体験がありました。

それ以来、CGはやめました。
デザインするのにいきなりパソコンに向かうのもやめました。

やっぱり紙と鉛筆。これに戻ってきました。
話は食洗機から途方もなくずれてますが、
便利なものが、必ずしも自分を最も元気にしてくれるものではないんだなって気づきました。

食洗機と手洗い。
どちらが自分たちの人生を豊かにしてくれるか、あらためて考えてみるのもいいですね。


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