「自然なお産」を伝えていくことに命をかける、吉村正先生と、
自然の摂理と自らの力で出産しようと心を決めて取り組む妊婦さんたち、
それらを支える家族や助産師さんたちの思いや葛藤が描かれています。
我が家のだまさんも現在妊娠5ヶ月目。
実は4年前、自然分娩を望みながらも、帝王切開となった経験があり、
今度こそは自然なお産を、という思いが、私たちの中にありました。
そんな特別な気持ちをもって、上映に臨んだんです。
例によって、映画の詳しい内容には触れませんが…
女性にとって、本来お産がいかに嬉しく、気持ちよく、素晴らしい体験であるかが、
強く伝わってきました。
映画の中で吉村先生は、自然なお産を手がけることに命をかけている、と言い、
そして妊婦さんたちにも、自分の命をかけよ、と時に優しくも、厳しく叱咤します。
お産という自然の摂理に身をゆだねてゆく中で出会う、喜び、厳しさ、感動…。
それは女性のみに許された体験ではありますが、
これまでは、そのことを漠然とうらやましく思う気持ちがありました。
しかし、今回受け取ったメッセージは違いました。
震災の様子が刻々と伝えられる中で、生きていく命、死んでいく命について、
考えさせられずにはおれなかったせいもあるかも知れません。
確かにお産は女性にしかできないこと。
男である私に、新しいいのちを産み出すことは出来ません。
では、この世の中に何を創り出していけるのだろう?
女は子どもを産み、男は街や船や建物を造る…?
いやいや、そんなことではありません。
私は、人が永年かけて育んできた「知恵」や、自然や歴史からの「学び」を今に生かし、
次の世代へ伝えていくことこそが、自分がすべきことではないのか、と思いました。
私が毎日取り組んでいることは、キッチンや家具という「ものづくり」です。
でも、本当はその先にある、幸せな家族や、元気なお母さん、伸び伸びと夢を語るこどもたちを
創り出したいと思っています。
また、毎日の手入れが必要な、ある意味「面倒な」木のキッチンを通して、
ものを家族のように可愛がり、大切に使っていく「こころ」を一人でも多くの人へ伝えていきたい。
職人さんのていねいな手仕事が、それを応援してくれています。
そうだ、男である私に、いのちを産み出すことはできないけれど、
こころを育てていくことはできる。
先人の知恵を未来へつなげていくことはできる。
映画の中で吉村先生は、
こういうあたりまえのお産というものをつなげていくことに、私は命をかけてるんだ
というようなことをおっしゃっていました。(正確ではないですが、そう受け取りました)
吉村先生は男ですから、自分でお産をすることはできないけれど、
(産婦人科医という)自分の与えられた役割を通じて、その素晴らしさを伝えています。
私は、直接的にはキッチンづくりを通してですが、本当はその先にある、
人のこころを育てていこうと志しているんだ、とあらためて気づかされました。
うちの社名、「ママル」とは「ほ乳類」という意味。
ほ乳類は、卵を産み落とすのではなく、唯一子どもに乳をやり、育てていく動物。
だから、そこに愛情というこころも生まれます。
キッチンを生み出すだけでなく、そこで暮らす家族の毎日が幸せであること。
そんな家庭で育ったこどもたちが、人やものを大切にするこころを学びながら、
のびのびと成長していくこと。
そんなこころがバトンリレーされて、未来の日本にまで「つながっていく」こと。